歯石を除去する機械を超音波スケーラーといいます。超音波スケーラーをきっかけにデジタル化が進みました。
超音波スケーラーをご存じでしょうか
こちらが超音波スケーラーです。主に歯石を除去する際に使用します。
この機械の先端にとりつけられている細い金属部品をチップと呼びます。チップは直接歯に接触させて使うので、繊細かつ精密に作られています。
このチップは超音波振動や振幅などを調整したうえで患者さまの歯にあてなければならないのですが、あるときメーカー純正のチップを使用していると歯石を除去している最中に急に振動が強くなり、チップの先端が熱くなっていることがわかりました。これはいわゆるチップの劣化によるものです。
このままですと知覚過敏などの症状が起きてしまいますので、さっそくその日のうちに対策を講じることにしました。
そうしましたところ手元にあった医療通販サイトのカタログに良さそうなチップが掲載されていたので、それを取り寄せて使ってみることにしました。
実際に使ってみると振動が小刻みに心地よく歯に伝わり、音もとても静かでした。純正のチップにくらべると全体的に薄く仕上げられており、弾力に富んでいることがわかりました。おそらくそれらが振動の安定性につながっているのだと直感しました。
歯石を除去する際に痛みや過熱が起きてはいけませんので、歯に対しては常にソフトタッチであることが求められるのですが、実感としてこのチップは使ってみる価値のあるチップだということがほんの数回使用してみただけではっきりとわかりました。
かくしてそれ以降、スケーラーチップで困ることはなくなりました。歯石がスムーズに除去できて、歯が過熱することのない優秀なチップを手に入れたことはとても幸いでした。このチップ、今では私の診療において宝モノのような存在になっています。決して大げさではありません。
超音波スケーラーのメンテナンス
ところで超音波スケーラーは毎日使うものですので徐々に消耗が起こります。
チップが消耗した場合は新しいチップに交換します。チップを装着するハンドピースは消耗品ではありませんので、消耗が確認できた場合はメーカーに送って修理してもらいます。
チップやハンドピースのコンディションが良くないと歯石を越えて歯表面までけずれてしまう可能性がありますので、常に注意深くこれらを点検するよう心がけています。
超音波スケーラーの評価と新たに芽生えた世界観
超音波スケーラーは国産のものもありますし、海外製のものもあります。車と同じで使用する人の好みや使い勝手、機械の特性などによって選び分けられます。
私はオサダ社製のエナックという超音波スケーラーを長年使っていましたが、現在はウッドペッカー社製のものを使用しています。
ちなみに振動がパワフルで破壊力があるという点でオサダ社製は非常にすぐれていると思います。一方で振動の繊細さやチップの種類、その他総合力で評価するとサテレック社のスプラソンP-MAXが群を抜いていると思います。
ではそんな中、なぜウッドペッカー社製を使うようになったかと言いますと、それは世界的なユーザー数がいちばん多いからです。ユーザー数が多いということは情報が多いということでもありますし、それは使用するうえで安心感につながります。これがいちばんの大きな理由です。
ウッドペッカー社製品は日本国内に存在する多くの代理店でパーツの補充や修理が容易に行えます。場合によっては直接製造国に問い合わせたり、用具を仕入れたりすることもできますので、日本の常識にとらわれることなく自由な発想で自分の歯科治療を組み立てることができます。
日本製の医療機械は精密に作られていて頑丈でもあるのでとても長持ちします。長持ちは良いことですが、皮肉なことに世界のトレンドから置き去りにされる現実もついてまわります。
要するに長持ちするし高額なので買い替える機会も少なく選択肢を広げる発想もないため、日本人歯科医師はなかなか世界のトレンドに触れることがないのです。特に理由がなければ何の疑問もなく国産の機械を買い続けてしまうという枠組みから解き放たれることがほぼないと言ってよいでしょう。
スケーラーから話が飛躍していまいましたが、もちろんスケーラーだけでなくたとえばエアータービンや口腔内スキャナー、3Dプリンターにしても残念ながら日本は世界の中心から大きく取り残されています。今はそういう時代なのかもしれません。
スケーラーを新調してからさまざまな海外製品に触れる機会が増え、またちょうどそのころ国産品に対する強い不満がたまっていたことも重なって、昨年の夏から歯科治療の中心とも言える診療チェアーを主要外国製品に切り替えて使い始めています。正直とても調子が良いです。信じられないレベルです。
このことにより、私の中で大きく変化したのは意識です。今までの国産メーカー主導の診療チェアー選びから脱却できたことは大きな革命でした。
新しい診療チェアーを手に入れていちばんおどろいたのは世界的な互換に限界がほぼないことでした。
それはこれまで使用していた国産の診療チェアーでは考えられないことで、エアータービンや5倍速コントラ、減速コントラ、エアースケーラーなど世界中に存在する周辺機器が後付けとして使用でき、しかも自分で組み合わせのアレンジができてしまう点がすでに大いに役立っています。
今後は3Dアライナーをインハウスで完結できるように
ご存じのように歯科界は一部アナログを残しながら、全体としてデジタル化が進んでいます。最も顕著なのは口腔内スキャナーと3Dプリンターです。
当医院も超音波スケーラーをウッドペッカー社製にしてから急速にデジタル化が進み、マウスピース矯正もインハウスで行うようになりました。きっかけが超音波スケーラーだったことはとても意外でした。
つづく