矯正41

叢生(そうせい)でこぼこの歯並び


叢生を表現したイラスト(矯正42)

叢生(そうせい:でこぼこした歯並び)は比較的簡単に治すことができます。ニッケルチタンワイヤーを使って優しく歯を動かしながらでこぼこをほぐしてゆきます。

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叢生(そうせい)とはでこぼこに重なった歯並びのことです

叢生は日本人に比較的多く見みられる歯列不正です。

叢生は、あごのサイズがふつうで歯が大きめである場合や、歯のサイズがふつうであごが小さめである場合に起こりやすいと考えられています。
つまり歯がきちんと並ぶためのスペースが足りないため、結果的に歯が重なる叢生状態が発現するのです。

叢生の発生要因としては遺伝的なものが影響していることが多いようです。なぜならあごの大きさや歯の形、歯の大きさは遺伝的傾向を受け継いでいることが多いからです。

これまで多くの叢生症例に携わってきましたが、歯とあごの大きさの不一致もさることながら、歯の形が扇型(おおぎがた)、つまり三角形に近い形をしている方に叢生は多く起こっていることを強く感じます。

なお叢生は乳歯から永久歯に生え変わる時期に起こり始めます(乳歯列の時期は叢生は起こりにくいと考えられています)。その後、適切な骨格の成長が起きて歯が並ぶためのスペースが確保されると(骨に余裕が生まれると)歯は自然にきちんと並んでくれるようになります。

理想的な生え変わりが行われた場合は矯正治療は必要ありません。定期的な点検を受けながら良好な状態を維持してゆきます。

*矯正治療を希望される方の多くは叢生であることが多いようです。叢生は乱ぐい歯(らんぐいば)と呼ばれることもあります。

叢生と同時に起こりやすい八重歯

叢生と同時に起こりやすい歯列不正として八重歯(やえば)というものがあります。八重歯とは犬歯(前から3番めの歯)がほかの歯よりも高い位置にはみ出てはえている状態のことです。

犬歯が高い位置にはみ出てはえていると牙のように見えることから、欧米では最も忌み嫌われる歯並びとして広く知れ渡っています。そのため欧米では幼少期の段階で八重歯を伴う叢生を治すことが多いようです。

日本ではこれまでは欧米ほど八重歯に対して敏感ではありませんでしたが、最近は親御さまがお子さまの将来のことを考えて八重歯ならびに叢生などの歯列不正は早めに治したほうが良いと判断されて相談に来られることが多くなっています。

そんな叢生ですが、子どものころに治すチャンスがなかったとしても、成人してからでも治すことができます。
その場合、今はできるだけ歯を抜かない方法で治すことも可能になっています。

それでは実際の叢生治療例をお見せしながら説明してまいりたいと思います。

比較的かんたんに治すことができた叢生治療例

叢生をはじめとした矯正治療の難易度は、あごの大きさ、歯の大きさ形、かみ合わせの状態、あごの動き、重なり具合、そのほか左右対称性などによって違いが現れます。それらの程度がわずかであれば比較的かんたんに治すことができます。

歯がわずかに重なり合った叢生の状態(矯正43)

重なりが改善された良好な歯列(矯正44)

少しだけ歯がねじれていて、部分的にわずかに重なっている状態です。このくらいの叢生であれば歯を抜かずに治すことができます。

このような叢生状態の歯列はまずニッケルチタンワイヤーというやわらかいワイヤーを用いて重なりを少しずつほぐしてゆきます。

叢生にはこの治療例にも見られますが過蓋咬合(かがいこうごう:深いかみ合わせ)がともなうことが多いので、叢生を治すとともに過蓋咬合も治してゆきます。
過蓋咬合の典型的な特徴は下の前歯が上の前歯にかくれて見えない状態であることです。

過蓋咬合は歯の重なりがある程度改善された段階で、MEAW(マルチループエッジワイズアーチワイヤー)という技法などを用いて改善してゆきます。

ニッケルチタンワイヤーはストレートな状態で用いることが多いのですが、MEAWの場合は下写真のようにL字型の曲げを付与した状態で用います。

マルチループエッジワイズアーチワイヤー

Tループ

過蓋咬合が部分的で軽度な場合はT字型の曲げを付与して用います。

*過蓋咬合はスムーズなあごの動きに支障をもたらすため顎関節に負担がかかり、顎関節症状を起こすことがあります。そのほか咀嚼(そしゃく:食べ物をかみつぶす)時に十分に機能が発揮できていない可能性があります(→咀嚼効率の低下)。そのため気づかぬうちに消化不良を起こしていたり、胃腸に負担がかかるなどの悪影響が起こっている可能性があります。
場合によっては姿勢にも関係してまいりますので放置しないことが大事です。

*過蓋咬合=ディープバイト

やや難易度の高い叢生治療例

でこぼこの程度や歯の重なり具合が強い叢生の場合は歯を抜くことがあります。部分的に歯を抜いて歯を動かすスペースを確保したうえで歯を並べてゆきます。
歯を抜くかどうかは総合的に判断しますが、抜歯か非抜歯かのぎりぎりにある叢生治療例をご紹介したいと思います。

歯の重なりが強い叢生状態(矯正45)

重なりが改善された良好な歯列(矯正46)

この治療例では前歯をできるだけ内側に(後方に)移動させたいという要望をいただいていましたので、その要望にこたえるかたちで部分的に歯を抜いて治しました。

治療前の状態は歯の重なりが強く、そのせいで歯が乾きやすく唇が閉じにくいといった不便さがあったようです。
その点を考慮しながら少しずつ前歯を後方に移動させた結果、治療後は口が自然に閉じるようになり、表情に自信を持てるようになったと満足されていました。

治療の順序としましては、まずニッケルチタンワイヤーを使って重なりをほぐしておいて、ある程度の挙動が確認できた時点で抜歯を行います。抜く歯は小臼歯と呼ばれる前から4番め、あるいは5番めの歯です。
その後は過蓋咬合を改善し、上下のかみ合わせを緊密にしあげてゆきます。

最近はアンカースクリューという骨に埋め込む小さなネジを応用することにより、歯を抜かずに歯列全体を後方に移動することが可能になっています。前述したMEAWという技法も歯を抜かずに歯列を後方に移動するのにとても役立っています。

叢生治療の期間について

できるだけ早く終われるようにと心がけていますが大人の方の場合は後戻りという現象が起こりやすいので、じっくり動かしてしっかり保定(ほてい)するようにしています。
平均的に歯を動かす期間が1~1.5年くらいで、保定は少なくとも1年以上行うようにとご案内しています。

この記事のまとめ

叢生を表現したイラスト(矯正42)

叢生(そうせい:でこぼこした歯並び)は比較的簡単に治すことができます。ニッケルチタンワイヤーを使って優しく歯を動かしながらでこぼこをほぐしてゆきます。

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カテゴリー: 矯正歯科 by
記事公開日:2021-07-06
最終更新日:2024-12-22
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