矯正41

叢生(そうせい)でこぼこの歯並び


叢生を表現したイラスト(矯正42)

叢生(そうせい)とは、歯がでこぼこに重なり合って並んでいる状態を指します。歯並びが乱れていると、見た目の問題だけでなく、かみ合わせのバランスがくずれたり、ハミガキがしづらくなったりするなど、口腔内の健康にも影響をおよぼします。

関連:乱ぐい歯(らんぐいば)、ガタガタの歯並び

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叢生とはでこぼこに重なった歯並びのことです

叢生が起こる原因は?

叢生はあごの大きさと歯のサイズのバランスがくずれたときに起こりやすいと考えられています。
具体的には以下のようになります。

条件影響
あごが標準的なサイズでも歯が大きい→歯が並ぶスペースが足りず、でこぼこになる
歯のサイズが標準的でもあごが小さい→同じようにスペースが不足し、歯が重なりやすくなる

つまり「あごのスペースに対して歯が大きい」ことが原因となるのです。
これを形態的な原因としておきましょう。それでは形態的な原因が発生する要因についても考えてみましょう。

叢生は遺伝の影響を受けやすい

叢生に影響する要因には以下のようなものがあります。

  • 遺伝的要因:親から受けついだ骨格や歯の大きさが影響をもたらすことがあります。
  • 乳歯の早期喪失:乳歯が早く抜けると永久歯が正しい位置にはえにくくなり、結果的に叢生になることがあります。
  • 舌のくせや口呼吸:舌で歯を押すくせや口呼吸が原因で歯並びがみだれることがあります。

叢生がもたらす影響

叢生を放置していると以下のような問題が生じます。

  • ハミガキがしづらくなる → むし歯や歯周病のリスクが高まる。
  • かみ合わせの悪化 → 食事がしにくくなったり、顎関節症(がくかんせつしょう)の原因になることも。
  • 発音への影響 → 特定の音が発音しづらくなることがある。
  • 見た目のコンプレックス → 笑顔に自信が持てなくなることも。

叢生の治療方法

叢生の主な治療方法には以下のようなものがあります。

1. ワイヤー矯正(マルチブラケット矯正)
特徴:

  • 歯にブラケットを装着し、ワイヤーの力で歯を移動させる方法。
  • 効果が高く、複雑な歯並びの問題にも対応可能。
  • 目立ちにくいセラミックブラケットを選べる。
  • 治療期間: 通常1.5~2.5年ほど。

2.マウスピース矯正
特徴:

  • 透明なマウスピースを装着し、少しずつ歯を動かす方法。
  • 取りはずしが可能で、食事やハミガキがしやすい。
  • 軽度~中等度の叢生に適している。
  • 治療期間: 通常1~2年ほど。

3.拡大装置を使用する方法
特徴:

  • あごの成長を利用して歯のスペースを確保する装置を使用。
  • 子ども(成長期)の場合に有効。
  • 治療期間: 数ヶ月~1年程度。

それでは実際の症例を見ながらくわしく説明していきます。

叢生治療例

比較的かんたんに治せた叢生の治療例

叢生をはじめとする矯正治療の難易度は、あごの大きさや歯の形・サイズ、かみ合わせの状態、あごの動き、歯の重なり具合、左右の対称性などによって異なります。これらの程度がわずかであれば、比較的かんたんに治せることが多いです。

歯がわずかに重なり合った叢生の状態(矯正43)

重なりが改善された良好な歯列(矯正44)

この治療例は歯がわずかにねじれていて部分的に重なっている状態です。この程度の症状であれば歯を抜かずに治すことが可能です。

まずはニッケルチタンワイヤーという柔軟なワイヤーを使用し、少しずつ歯の重なりをほどいていきます。

また、叢生には過蓋咬合(かがいこうごう:深いかみ合わせ)を伴うことが多いため、歯並びだけでなくかみ合わせの改善も同時に行います。
過蓋咬合とは下の前歯が上の前歯にかくれて見えない状態になることです。

💡 **補足情報**
歯の重なりがある程度改善した段階で、MEAW(マルチループエッジワイズアーチワイヤー)やリバースカーブアーチワイヤーのような技法を用いて過蓋咬合を改善していきます。

MEAWの特徴は下の写真のようにワイヤーの一部をL字型に曲げて歯を動かす点にあります。

マルチループエッジワイズアーチワイヤー

Tループ

過蓋咬合が部分的で軽度な場合はワイヤーをT字型に曲げて使用します。

過蓋咬合(ディープバイト)はあごの動きを妨げ、顎関節に負担をかけるため顎関節症の原因となることがあります。また、咀嚼(そしゃく:食べものをかみくだく)機能が十分に発揮されず、消化不良や胃腸への負担につながることも。さらに姿勢にも影響を与える可能性があるため、放置せずに適切な対処をしておくことが大切です。

やや複雑な叢生の治療例

歯のねじれや重なりが大きい叢生では歯を抜いてスペースを確保することがあります。抜歯したスペースに歯を適切に移動させながらスムーズな歯並びにしていきます。抜歯の必要性は総合的に判断します。
それでは抜歯と非抜歯の境界線上にある治療例を見てみましょう。

歯の重なりが強い叢生状態(矯正45)

重なりが改善された良好な歯列(矯正46)

この治療では前歯をできるだけ内側(後方)に移動させたいという患者さまのご希望があり、それに対応するために部分的な抜歯を行いました。

治療前は歯の重なりが強く唇が閉じにくいという不具合があったため、これを考慮しながら前歯を後方へ移動。結果として口元が自然に閉じられるようになり、表情にも自信を持てるようになったという喜びのコメントをいただきました。

治療の流れはまずニッケルチタンワイヤーで歯の重なりを整え、必要に応じて小臼歯(前から4番目または5番目)を抜歯。過蓋咬合を改善し、上下のかみ合わせをしっかりと仕上げます。

最近ではアンカースクリュー(はぐきに埋め込む小さなネジ)を使用することで歯を抜かずに歯列全体を後方へ移動できるようになっています。また、前述したMEAW(マルチループエッジワイズアーチワイヤー)も非抜歯矯正における有効な歯の移動方法です。

矯正治療後の保定(リテーナー)

矯正治療後は、歯の位置が元に戻らないように保定装置(リテーナー)を使用する必要があります。保定期間は最低1~2年、場合によっては半永久的に使用することも推奨されます。

叢生治療を受けた患者さまの声

🗣️ 30代女性

「治療前は歯並びが気になって笑顔に自信が持てませんでしたが、矯正後は自然に笑えるようになり、毎日の生活が明るくなりました。」

🗣️ 20代男性

「マウスピース矯正を選びましたが、周囲に気づかれずに歯並びを改善できたので大満足です。」

あなたの歯並びはもっと良くなる!

叢生(でこぼこの歯並び)は、見た目だけでなく健康にも影響を及ぼします。ワイヤー矯正やマウスピース矯正など、適切な治療法を選択することで美しい歯並びと健康的な口腔環境を手に入れることが可能です。

「自分の歯並び、大丈夫かな?」と思ったら、まずは歯科医院で相談してみましょう。専門家の診断を受けることで最適な治療法が見つかるかもしれません。

叢生治療のポイント・まとめ

  • でこぼこの改善
  • 前歯の圧下(前歯を垂直的に下げること)
  • 全体的な歯並びを後方に少し移動させる(水平的に下げること)

これらは叢生だけでなくどんな矯正治療においても必要とされる大切なポイントです。

🌿 memo
叢生に関する参考記事です。
日本人に多い歯並びの乱れ『叢生』とは?その発生率と矯正の必要性

叢生をデータから考察しています。

カテゴリー: 矯正歯科 by
記事公開日:2021-07-06
最終更新日:2025-04-19
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