痛みの少ない矯正治療


やわらかくて細いニッケルチタンワイヤーを使うと矯正治療はあまり痛くありません


矯正治療で使用するワイヤーには大きく分けて二種類あります。ひとつはやわらかい感触のニッケルチタンワイヤーで、もうひとつはやや硬めのステンレスワイヤーです。

ニッケルチタンワイヤーは矯正治療の最初の段階で用います。治療開始時点では歯並びの状態がまだでこぼこしていていますから、ねじれや重なりををほぐすためにはニッケルチタンワイヤーのようにやわらかくて繊細に作用するワイヤーが必要になるのです。

ニッケルチタンワイヤーには弾力が備わっていますから、少々でこぼこしている歯並びであっても抵抗なくすんなり装着することができます。その後装着されたニッケルチタンワイヤーはまっすぐになろうとする形状記憶力を徐々に発揮しながら歯を動かしてゆきます。

歯が動き始めると、わずかに痛みが生じることがあります。最初は初めてのことばかりですから痛みにびっくりされる方もいますが、この痛みは一時的で、ほどなくして消失してゆきますのでご安心ください。この現象は歯にワイヤーが装着されたことによって起こった歯槽骨の軽い炎症によるものです。

痛みに対する感受性は人によって差がありますから、ほとんど痛くなかったという人もいますし、想像していたよりも痛かったという人もいます(大体半々です)。ちなみにこの痛みはワイヤーを装着した日よりも若干遅れて、翌日、翌々日に起こることが多いようです。

そのほか食事の際に物を噛もうとした瞬間、「うっ」と前歯がひびいたり、歯の痛みではありませんが矯正装置の角ばった部分が粘膜にこすれて口内炎になったりすることがあります。粘膜は皮膚のような角化は起こりませんが、表面はだんだん丈夫になってゆきますので、矯正装置による口内炎はできにくくなります。

一通り考えられる痛みについて書いてみましたが、すべてが自分に起こるとは思わないようにしてください。痛みの程度や起こる可能性には個人差がありますし、痛みやこすれて起こる炎症はからだがきちんと順応してのりこえてくれます。


できるだけニッケルチタンワイヤーを使い続けます


私がふだん最初に用いるようにしているニッケルチタンワイヤーのサイズは最小の.010インチです。このワイヤーだけでも十分でこぼこは改善できますが、さらに良好な状態に整えてゆくために徐々にワイヤーのサイズを大きくしたり、部分的に曲げを入れるなどして整列を進めてゆきます。

以前は歯列がある程度スムーズに並んできた段階でステンレスワイヤーを併用することが多かったのですが、ニッケルチタンワイヤーだけで十分対応できることがわかりましたので、今はできるだけニッケルチタンワイヤーを使い続けるようにしています。

抜歯して矯正治療を行うケースでは、抜歯空隙を閉鎖する段階でステンレスワイヤーを使用する必要がありますが、抜歯をしないケースが増えてきた今は、最終段階においてもニッケルチタンワイヤーを使って仕上げるようにしています。

そのほか痛みをやわらげながらスピーディーに歯を移動させるる方法としてレジンアップというものとブイベンドという手法があります。レジンアップはかみしめたままでは歯は動かない点に注目した結果得られたもので、歯が動くためには十分なスペースが必要であることをふまえた上で一定量のバーティカルスペースを確保しながら、その直上を上下顎がスライドすることで発せられる歯根膜からのインパルスがニューロンを介して持続的な筋反射を起こさせる仕組みを取り入れたものです(歯根膜咬筋反射)。この反射により咬合面⇒歯根膜⇒顎関節に至る一連の筋活動がデュナミスを生み出し、歯軸の改善と歯根の位置移動が起こると考えられています。これは意図的に軽度の咬合異常を起こさせていると説明することもできます。

この状況下では一見、咬合痛(歯根膜痛)が起こりそうに思えますが、実際には軽い違和感が一時的に起こるだけで、違和感を避けるようにして理想的なかみ合わせと安定した顎位がもたらされます。説明が長くなってしまいましたが、その結果ニッケルチタンワイヤーのような細くてやわらかいワイヤーの力で歯は十分動きますし、またニッケルチタンワイヤーでなければレジンアップの効果は得られないこともわかっています。このようにしてあまり痛みを感じずに歯は動いてゆくわけです。これらはいずれも東京都上野区でご開業されている富岡直哉先生のご考案によるものです。


一般的な矯正治療においては痛みが出るタイミングは3回やってきます


まず最初のワイヤーを装着したときに軽度の痛みが生じます。その次に痛みが出やすいのがニッケルチタンワイヤーからステンレスワイヤーに交換したときです。3回めの痛みは、歯を抜いて生じたすきまを閉鎖(牽引)するときにおとずれます。

前述しましたが、現在はニッケルチタンワイヤーをメインに使用していますので、2回めの痛みに遭遇する機会は少なくなりました。3回めの痛みに関しましても、歯を抜かずに治すケースが増えてまいりましたので、すきまを閉鎖する際に生じる痛みに遭遇することもかなり少なくなってきています。

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