変色歯はまずホワイトニング、むずかしい場合はセラミッククラウンで色調を改善します。
変色歯の改善策
歯の変色に対する改善策はまずホワイトニングです。ホワイトニングを実施してみて満足のいく結果であればそのまま過ごしていただいてかまわないと思います。その後は定期的にセルフメンテンナンスを行っていただくことで良好な色調を維持することができます。もし十分な結果が得られなかった場合は必要に応じて改善策2に進みます。改善策2とはセラミック素材を用いた治療法のことです。具体的にはセラミッククラウン、そしてラミネートベニアです。そのどちらが治療法として相応しいかは変色の度合いや患者さまのご希望を考慮したうえで使い分けることにしています。
では変色歯の治療例を見てみましょう。
まずホワイトニングでどのくらい白くなるかを確認します
歯の治療はできるだけ小規模で低価格な治療法から取り組むことをおすすめします。どんな変色状態であっても、もしかしたらホワイトニングでうまくいくかもしれないという希望を持って取り組んでいれば、わずかでも白くなったことに感動できるかもしれません。
最初からセラミック素材を用いて治療を始めるよりも、納得しながら治療を体験してゆけるという点でホワイトニングにはさまざまなメリットがあると思います。
白さに対する思い
白さに対する思いは一人一人まったく違うようです。今より少しで良いから白くしたいという方もいますし、とにかく真っ白くしたいという方もいます。
やや黄色みを帯びた歯、治療前の状態です
セラミッククラウンで白くした状態です
この治療例の方は上下のホワイトニングを受けられたことで満足されましたが、日を追うごとにもっと白くしたい、真っ白くしたい、誰よりも白くしたいという思いが強くなったと連絡がありました。それで後日あらためて上の前歯をセラミッククラウンで白くすることになりました。
このような場合は心配ですので、私のほうから歯を削ることについての重要事項を説明させていただくようにしています。そして一定の検討期間を過ごしていただいてから治療を開始します。これは、さらに白くしたいという願望が一時的な感情ではないことを確認するために実施しています。
真っ白くする場合はこの治療例のように特別白い、びっくりするくらい白い色調のセラミック素材を用います。
この写真だけを見ていると上下の色調の差に違和感を感じてしまうかもしれませんが、意外とご本人は気にならないことが多いです。この方も大満足でした。
*今回使用したのはジルコニアセラミッククラウンという種類のオールセラミッククラウンです。
下の歯はあまり気にならない人が多い
上の歯が白くなると下の歯も同じような白さにしたくなる人が多いのかというと、実はそうでもないようです。私の今までの治療経験では、むしろ下の歯はあまり気にならないという方のほうが多いと感じています。
よほど気になるようであればあとから下の歯もセラミック治療を行うことができますが、下の歯はホワイトニングで十分だと私は考えています。
縞模様の変色歯の場合
歯が変色する原因はさまざまですが、中には抗生物質の摂取によって起こるものもあります。抗生物質が原因で起こる変色は特徴的で、生まれつき歯の表面に縞模様が現れるかたちとなって発現します。この類の変色はセラミッククラウンやラミネートベニアで歯をカバーすることがより確実な改善策になると思いますが、念のためホワイトニングも試しておきましょう。この場合、ホワイトニングを行うことによって全体的にうっすら白くなるのですが、問題の縞模様を消すことは残念ながらできません。とは言え現状に納得する意味でもホワイトニングはやっておくべきだと思います。
では縞模様の変色歯治療例を見てみましょう。
上真ん中2本が特に縞模様が強く現れています
歯を削っても縞模様は消えません
上前歯4本にセラミッククラウンを装着しました
この方のように歯のつけね部分の色調が濃い場合は、ラミネートベニアよりもセラミッククラウンのほうがより確実に下地の色を隠すことができます。セラミッククラウンのほうが厚みを確保しやすいためです。
歯の変色に対する治療方法の使い分け
確実に色調を改善したい場合 → セラミッククラウン、ラミネートベニア
今より少しでもいいので白く明るい色調にしたい場合 → ホワイトニング
いずれのケースにおいてもまずホワイトニングでどのくらい明るくなるかを確認しておくことが大事だと思います。
歯に縞模様が生じる主な原因
歯に縞模様ができる原因は、石灰化不全、テトラサイクリン系薬剤の長期服用などが考えられます。
石灰化不全
乳歯における石灰化不全は母親の胎内にいる時点で母親の服用した薬剤の影響によって起こる可能性があると考えられています。そのほかに早産によっても起こる可能性があります。永久歯の石灰化不全は熱性疾患や栄養障害、フッ素の過剰摂取などが原因で起こると考えられています。
テトラサイクリン系薬剤の影響
テトラサイクリン系薬剤の影響によるものは、乳児期から6、7歳くらいまでのあいだに本人がその種の薬剤を長期間服用した場合に起こると考えられています。ちょうどその時期は永久歯の象牙質が形成される時期に重なるため、象牙質の形成になんらかの影響をおよぼし、その結果変色が起こるとされています。
テトラサイクリンは昭和30年代後半から40年代くらいまでの間に多く処方されていましたので、そのころに該当する年齢の方たちにこのような変色が特徴的に現れているようです。また影響を受けた時期によって縞模様の濃い部分の位置が歯の先、中ほど、付け根とちがいがあることも特徴のひとつで、紫外線にさらされた時期も関係があるとされています。
縞模様は深い部分にまで及んでいます
注目していただきたいのは、写真中段でわかりますようにどんなに歯をけずっても縞模様は消えないという点です。縞模様が歯の深部にまで及んでいるようすがはっきりとわかります。
まとめ
歯の変色はさまざまな原因で起こります。状態も人によってさまざまですが、改善策のひとつめとして試しておきたいのがホワイトニングです。ホワイトニングで改善された場合はセルフメンテナンスを続けて良好な色調を維持します。ホワイトニングで満足が得られなかった場合は次の段階としてセラミッククラウンやラミネートベニアなどの歯をカバーする治療法を検討してみます。ただこれらのセラミック治療は歯を削る必要がありますし、ホワイトニングにくらべると費用も少し高くなるという特徴がありますので、急がずにこれらの治療が本当に自分にとって必要なことなのかとか、ホワイトニングで一旦終わっておくというのはどうなのだろうか、といった部分についてあらためて考えてみていただけると安心して次に進めると思います。